【紹介する本】死にがいを求めて生きているの@朝井リョウ
「生きがいはなんですか?」と聞かれて、
あるにせよ、ないにせよ、反射的に答えられる人以外、
平常心で読み進めることが、できないのではないか。と思うそんな作品です。
求めているのは生きがいなのか、死にがいなのか。
生きがいがあれば偉いのか。
・もともと命を燃やせる対象があるから、何も考えずに生きてこられた人間。
・何か命を燃やせるものを作らないと生きていけない人間。
自分はどっちなのだろうか。
「生きているだけで良いんだ」
「ナンバーワンよりオンリーワンだ」
「生き方は人それぞれ自由だ」
と言う世の空気の中で問われる、
「生きがい」
の意味を真剣に考えて見る作品です。
今作の魅力
主人公を哀れに思う一方で、自分がそうでないと言い切れないから
どんどん深く吸い込まれていく。
最初は、典型的な小・中学生と描かれて、大学生の物語に入っていく、
この物語が面白いのは、最後に何人もの人生が重なっていくところです。
一つの主張というか、メッセージ性的な部分に
すごい厚みが加わっていきます。
しかも、これは個人差があると思いますが、
読者もその一人にさせられるような感じです。
本の登場人物+自分の人生が重なって
進んでいくクライマックスはもう抜け出せません。
これを読んで何を感じるかは、千差万別。
ここから先はいつも以上に主観で書き進めた感想文になります。
ゆとり世代と生きがい
ゆとり世代真っ只中の人間は、
ナンバーワンよりオンリーワンを目指した思想の中で教育をされてきました。
ただ、それは不完全なまま進んでいきました。
なぜなら、親や先生はそういう時代を生きていないから、
人と比べずに人を育てる術なんてほとんどの人が持ち合わせていないから。
それに合わせて、よりよく生活したいと思う人類の本能もあります。
そういうチグハグな教育の中で生活すると、
「生きがい」を見つけれない人間は、
歳と共に、次第に大きくなるコミュニティの中で
さらに、もがき苦しんでいくことになります。
生きがいとは?
生きがいとは、生涯を通して何か夢中になれるもののことです。
本書の言葉を借りるなら、
それが、他者に向いていれば他者貢献、自分に見ていれば自己実現になる
生きがいのない人間は、寝て起きて、食べて、ただ生命を維持するだけの
生き物のように思えてしまう。
そこに落ちないためには、自分を冷静に推し量る物差しを持つか、
人に認めてもらうしか方法がない。
人に認めてもらうために生きようとすると、
どんどんチグハグしていく。
認めてもらうという生き方自体が目的と手段が逆転した
チグハグした生き方であるから。
チグハグな生き方
「英語が好きだから留学に行くのではなくて、
留学に行った経験が欲しいから留学に行く。」
目的と手段が逆転している考え方ってものが、散見されます。
特に就活を控える大学生はそうではないでしょうか。
履歴書に書けるような経験をするために
〇〇をやりました。と言うために
行動を起こし、モチベーションを後付けする。
そんな人も一定数いるのではないかなと思います。
僕自身、何かどこか気持ち悪くて、もやもやしていました。
掘れば掘るほど、自分がどこに向かっているのか
わからなくなっていったからです。
上に示したように、「生きがい」を取って付けたように生きると、
どこかで結局剥がれ落ちる瞬間が来て、あなたを悩ませる時がきます。
僕は、「思考の軸」を持つことで脱出しました。
自分の物差しを持つということです。
自己実現の生き方です。
物語のクライマックスに重ねながら、
自分はどうやってい生きてきたのか
どうやって生きていくのか、
ぜひ考えてみていただきたいです。
最後に
冒頭にも述べましたが、この本のクライマックスは、
たまらなく面白いです。
中盤は、何かぎこちなく、チグハグで気持ち悪い印象もあるかもしれません。
それも一つ一つが大事な伏線です。
クライマックスは2度3度楽しめます。
そして、読み終わった後に「自分は?」ってなります。
余韻に浸れる本こそ名著だと思います。
それ故、本気で推せる小説です。
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